口之島の昔話
わかみや様のお話
「ふじ荘」の神棚に祀られている“わかみや様”は、漁師さんの守り神。
参拝に訪れるのは、島の漁師さんを初め、釣りにやって来た釣り船の船長さん、あるいは釣り人さん達だ。
わかみや様は川や海の事故から、みんなを守ってくれる。
不漁だった船の船長さんがお参りをしたら、翌日、大漁で帰れたという話もある。
実は私も、お神酒をあげてお参りをしたあとで漁に行ったんだけど……ごらん、見事に大漁だったよ。
そうそう、これは本当にあった昔の話。
「ふじ荘」のおじいさんが、丸木船で、10kmぐらい離れた“芽瀬”という所に漁に行った時のこと。
なんと丸木船が転覆して、おじいさんは海に投げ出されてしまったんだ。
おじいさんは何とか助かろうと岸に向かった泳いだ。
だけど、その辺りの海は、潮の流れが早くて、人間の力ではとうてい助からず、沖に流されてしまうようなところだった。
その時だった。空から無数の白いカモメが現れた。
カモメはおじいさんのすぐ周りを飛び始めた。カモメに周りを守られながらおじいさんは泳ぎ、なんとそのまま、島まで無事辿り着いたんだ。
そう、漁に出る前におじいさんは、わかみや様のもとへお参りに行っていたんだ。
この話は、伝説として今でも「ふじ荘」で語り継がれているよ。